I CAN FLY

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五時を示す“かごめかごめ”のメロディーが街に響いている。 荒い息づかいとともに、達也も屋上に姿を見せた。少し遅れて友香、満里奈もやってきた。 『来るな……来るな…』 『………祐司?』 『来るな!!!!』 一歩踏み出した達也に、祐司から厳しい叱咤が飛んだ。 『……終わり…だ』 祐司は、どこか浮ついた様子で安全柵を乗り越えた。このマンションは11階建てであり、もし落ちたら命はない。 『祐司くんダメ!!!』 友香の叫びも届かない。 『待てよ!』 達也も安全柵を乗り越え、祐司と同じ、地上11階の恐怖の上に立った。吹き付ける風が、直に体を揺らし、バランス感覚を奪った。 『祐司…!』 『もう終わりだ。もうダメだ。もう終わりだ。もうダメだ……』 いつもの飄々とした祐司はどこにもいなかった。今の祐司は、何かに恐々としていて周りが見えていない。 風が弱まるとその傾向は増し、『かごめかごめ』を口ずさみながら、少しずつ地上に近づこうとしていた。 何故こんな… その疑問は、その場にいる全員の頭をよぎった。 そしてその時。街に響く“かごめかごめ”の唄は消えた。 『………あれ…?』 『祐司?』 『ちょっと達也ここ……って怖っ!!!!え?何?ここで何してんの?』 突然、祐司の様子が元に戻った。呆気に取られる達也をよそに、祐司はひとりでに柵を乗り越え、友香達の所へ戻って行った。 『祐司くん!!何やってんの。友香、心配したんだからね!』 『はあ?お前、何言ってんの?』 『祐司くん。悩みがあるなら、厄介なそこのお嬢さんに言えなくても、わたしに言ってくれたらいいのに…』 『え、何がですか?話見えないんですけど…』 『達也!!』 友香は走り出し、達也に抱きついた。その様子を満里奈は、目を丸くして見つめ、軽蔑の視線を送った。 『友香、一瞬だけ心臓が止まったの。また動いたからいいけど…ずっとその繰り返しだったんだから!あんまりびっくりさせないで』 『…その心臓は、鼓動だろ。止まったり動いたりはポンプがな…』 そこまで言って、達也は友香が自分の話など聞いていないことに気づいた。まっすぐ前を向き満里奈と睨み合う友香に。
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