バレンタイン

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 二人が通う高校は、霞工業高校──  男子校である。  男子校。  男子。  昔から女の子の格好を好み、女の子らしく生きてきた、男子。  約束の時もまさか、同じ性とは思いもせず。 「彼女に、して? ゆーくん……」  きらきらした瞳で悠輔を見つめる凛。何かを間違えてしまいそうな視線だが、悠輔は凛の肩を掴んで、 「いや、無理。俺、女の子好きだし」 「約束は守ろうよ、ゆーくん! ほら、私と結婚しよ?」  ポケットから婚姻届を取り出す凛。既に凛の欄は全て埋められており、さらに悠輔の欄も埋めてある。残りは印鑑を押すのみである。 「いやいやいや! こんなの政府認めないから!」 「じゃあ事実婚でいいから! 私、ゆーくんの元気な子供産むから!」 「産めねーだろ!」  むぅー、と呻く凛。確かに、凛は可愛い。悠輔にとっては反則だ、と言わざるを得ない。実際にナンパはされる、悠輔と歩けばカップルと間違えられる。お似合いのカップルね、といわれる始末。 「うー……。うー! 好きっ!」  勢いよく飛びかかってくる凛。俺は後れをとった。 「ちょっ! りん――っ!」  バレンタイン。  それは、告白する『者』の大切な日。  愛の日。  そしてまた、愛はどこかで紡がれていく。  それこそ、いろんな愛が。  いろんな。 PS 「ゆーくん。……同性でも結婚できるのってどこの国だっけ?」 「リアルなことを聞くな……」
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