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あの後、彼女達は帰っていき俺達の間には異様な空気が流れていた。
「……。」
俺はその空気に耐えられなくベンチから腰を上げた。
『海樹、あんま気にすんなよ!只の噂なんだしよォ!』
俺がそう言っても海樹は未だ難しい顔をしていた。
『海樹?』
「そうだな!でも何でそう言う噂が出るんだろうな、俺も悠哉も同じ男だって言うのによ!」
『ホントだよな!!』
そんな事を話していると海樹と同じ講義を専攻している友達が海樹を呼びに来た。何やら教授が海樹を呼んでいるらしい。
「じゃ~悠哉、また後でな。終わったら電話すっから。」
『あぁ。まっ、頑張れよ!』
「おぅ!じゃ~な。」
そう言うと海樹は行ってしまった。俺は海樹が見えなくなるのを確認すると後ろのベンチに力なく座り込んだ。
何を考えるでもなく只前を見ていた俺はベンチの上で体育座りした。所謂某人気マンガ・デス〇ートに出てくる世界の切り札の座り方に似ている。って何自分で解説してんだ、俺。
溜め息を一つすると俺は膝を抱え顔を膝の間にすっぽりと収めてしまった。
『……。』
【あぁ~あ、いつの間に俺ってこんなに女々しくなったんだ?恋する乙女かっての!いや俺、男だって…。】
『やべっ、1人ツッコミしてるよ、俺。』
そんなこんなで(?)1人脳内暴走していると頭上から声をかけられた。顔を上げると先程、俺達の仲を応援していると言ってくれた彼女達がいた。
『さっきの…。えっと、佐伯さんと、加瀬さんと、滝枝さんだよな?』
「あっ、はい。」
『どうかした?』
「隣、いいですか?」
『あぁ、どうぞ。』
3人はベンチに座ると買ってきたコーヒーを俺に手渡した。
『有難う。』
貰ったコーヒーを飲み始めると彼女達は言いにくそうな顔をしていた。
『…どうした?』
「あの…、間違ってたらごめんなさい。」
『…何が?』
彼女達はそう言うと少しの間黙り込んでしまった。俺は彼女達が次の言葉を発するまで待とうとコーヒーを口に運んだ。
「もしかして悠君は、海君の事好きですか?」
『ぶっ!…ゴホッゴホッ。』
突然の事にコーヒーが気管に入り俺はむせてしまった。
「ごめんなさい。大丈夫ですか?」
『ゴホッ…大丈夫。ゴホッ』
誰かにバレるなんて思いもしなかった。
俺はこれからどうすればいいんだ?
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