42人が本棚に入れています
本棚に追加
無理して笑う玲来さんに俺は胸を締め付けられた。
『…安心して下さい。』
いきなりそう言われて何の事だか分からない玲来さんは首を傾げた。
『…俺、海樹に告白しようなんて思ってませんから…。』
玲来さんの顔を見れなくて俺は静かに歩き出した。少し歩くと玲来さんの言葉に足を止めた。
「逃げるの?」
背を向けたままでも分かる怒りを含んだ声だった。
『…無理なの、分かってますから…。』
「そんなの分からないじゃない…。」
『分かりますッ!』
諦めようとしている俺の心にストップをかける玲来さんの発言に苛立ちを覚えた俺はつい怒鳴ってしまった。
『すみません。…でも…俺は海樹の“最高の親友”ですから、それを壊してまで告白しようなんて思ってません。』
自分で言ってて泣きそうになった俺は涙が流れないように空を見上げた。俺のその後ろ姿見て玲来さんには分かったのか彼女はそれ以上何も言わなかった。
『…俺はそんなに強くない。』
小さく呟いたその言葉は真夏の夜の空へと静かに消えていった
優しい君の事だから
俺の気持ちに応えられない自分をきっと責めるだろう。
だったら俺は、自分に嘘を突き通す。
君を傷付けるくらいなら俺は自分の気持ちに蓋をする。
なかった事にはきっと出来ないから
心の中だけでも君を想い続ける事を許してほしい。
.
最初のコメントを投稿しよう!