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今から、織田を挟撃し地獄に落とす様子を、思い描いていた久政は、後備えからの混乱や怒号に苛立ち
「何を騒いでおる!」
と、自身の夢想を破られた苛立ちを、近くの者にあたった。
が、その時にはすでに、ふいをつかれた久政軍は、なすすべもなく、後備えから崩れかけていた…
「何事だ!何が起こった!」
怒鳴る久政だが、兵は逃げ惑い、馬廻り衆も何が起こったのか判らず、ただ右往左往してるのみだった。
しかも、敵の背後を突いたと思い、備えもなにもない俄押しの最中に、背後を突かれたうえに、背後の敵は長政の旗印を背負った、親子兄弟であるからなおさらだった。
さらに、織田軍の背後に奇襲をかけたはずが、織田軍には備えがあり逆に押されている。
「もう駄目だ~」
と、一人の足軽が叫んで逃げだすと、戦馴れしてるはずの物頭や、身分のある武者までも、一人が五人、五人が十人になり、逃げはじめた。
もう軍勢としての体をなしておらず、何もできずその場に立ち尽くす者は、織田か長政かどちらかの兵に確実に命の炎を消されるだけだった。
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