第二章

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     二階と三階をつなぐ階段の踊り場で一人の女生徒が膝をついて顔を真っ赤にして壁に頭を押しつけていた。  かなり目立っているその生徒は、先ほど目的を果たしたフタバだ。  その様子を怪訝そうに眺めながらも階段を上り下りする生徒たちは、いつもの奇行だろうと声をかけようとはしなかった。  そんな中、一人の男子生徒が命知らずにも声をかける。 「何やってんだ、こんなとこで」 「うっさい。ちょっと緊張の糸がほどけただけよ」 「緊張? お前がか」 「悪い?」 「いや、案外可愛いところがあるじゃないか。チョコ渡すのに緊張ねぇ」  フタバは息を整え立ち上がろうとして、しかしまたしゃがんでしまった。 「あんなに緊張するとは思わなかった。不覚かも」 「ま、渡せたんならいいんじゃないか?」  フタバは答えず、ポケットとから一口チョコを取り出して、男子生徒に差し出す。 「なんだコレ」 「あげる。一応」 「まあ、……もらっとく、一応」  男子は苦笑しつつ受け取り、そのまま去っていった。  フタバは態勢を変えて壁に寄りかかり天井を見上げる。 「あっつー」  顔はほのかに朱を帯びていた。  
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