偽りは…

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「そう拗ねるなよ。ほら、やっと終わったんだ。サッサと起きようぜ」 「そうだな…」 やっと帰れると喜ぶ隼人とは違い、翔は何か腑に落ちない様子だった。 「どうした?」 「いや…。悪い、先に起きててくれ。直ぐに俺も行くから」 「ん? まあいいか」 一瞬不振に思う隼人だが、翔に早く戻れと告げ消えた。残った翔は再び彰に近づき顔を覗き込めるように隣にしゃがみ込んだ。 「馬鹿だな、彰…。まだ事起こすには早過ぎなんだよ。一人で先走りやがって…。ホントに大馬鹿…だぜ」 彰の亡骸にポタリと雫が落ちた。翔は彰に触れようとしたがぐっと堪え拳を握り絞めた。 「待ってろ。全部済んだら俺も行くからな」 握られた拳からは血が滲み出ていた。翔は、最後に彰の姿を頭に焼き付け部屋を出て行った。 _
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