映し出されたモノ

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全く体の自由が利かなかった。 ―ズルッ― それから眼を背けることが出来ず、ついに布団が外れた。 「あっ、い、嫌だあっ!!!!!」 翔は恐怖で叫んだ。 そのとき、突然視界が変わり天井が見えた。 「えっ? なんだ?」 気がつくと翔はベットで仰向けに寝ていた。息が乱れ、汗で着ていたシャツが張り付いていた。 「っ!!」 慌ててベットから飛び起き布団を捲った。そこには何もなかった。 「何もねえ。さっきのも夢…なのか?」 翔は自分で頬をつねってみる。 「痛って!」 痛みがあった。 俺は今は確かに起きている。けど、さっきのは何なんだ?水を飲もうとしたときに血の味がした。夢なら味なんかしない、寧ろ感覚なんがない筈…。 いくら考えてもわからなかった。 ―血の味がした水― ―あの布団の中身― あの時の感覚はあまりにもリアルで、はっきりと覚えていた。とても夢とは思えなかった。 「そうだ。今、何時だ?」 水を飲みに行く前に時計を見ていたことを思いだした。もしあれが夢なら今と時間のズレがある筈だと翔は考えていた。
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