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全ての準備をするために二週間かかった。僕は参考書の内容を細かくまとめたノートを五冊作り、それから問題集を二冊購入し、全問を自力で解いた。
そしてそれを学校へ持っていくと、噂は簡単に消えた。これだけの努力の痕跡を見せ付けられれば、僕が楽をしているなどとは思えるはずがない。僕が以前言っていたこととの矛盾を指摘する者もいたが、夏休みの間にやったということにした。噂の発端である塚本も不審そうな表情を見せながらも納得した。とにかくこれで僕は噂から解放されたのだ。
しかし、僕の心には湿気のようなものが残っていた。
たとえ皆が納得したとしてもあれは僕が捏造した嘘の証拠に過ぎない。そのような形で噂を消し誤解を解くことは、本当に正しかったのか。本当の意味で解決するならば、僕は別な形で証明するべきだったのではないだろうか。
その考えは僕の心にもやをかけた。そして僕は、ことあるごとに塚本の無表情を思い出した。僕は何か行動を起こさなければならない気がした。
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