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少しずつ瞼が重くなってくる。僕は逆らわずに目を閉じ、頭の後ろで指を組む。だが眠くはなかった。
不思議とひどく居心地がよかった。僕にとって、ここはなんだか奇妙なほど神秘的な場所のように思えた。
横から、鉛筆が紙の上を這う音が聞こえた。目を閉じるうちに耳の感覚が鋭くなったのかもしれない。僕はしばらくそれを聞くことにに神経を集中させた。
その音はしばらく続いた後、紙が擦れ合う音に変わり、また戻った。止まったかと思えばまた始まり、まるで梅雨の雨のように止めどなく続いていた。
何となく、彼のことが気になった。背格好からすると、恐らく彼は同年代だった。
なぜ彼はこちらの部屋を選んだのだろう。彼はどの学校にいて、どこに進学するのだろう。なぜあそこまで集中できるのだろう。
疑問は無数に湧き出てきた。そしてそのいくつかは頭の中にカビのようにこびりついた。
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