才能

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 十四歳を迎える秋、僕は努力を知らない少年だった。勉強にしても運動にしても、何かを習得するために苦労したことなど一度もない。家もそれなりに裕福で、何不自由なく生きることができていた。  僕は市内でも学力が高いと言われる私立中学校に通っている。とは言え、ここに入るために小学校時代に受験勉強を強いられたという人間は少ないだろう。この地域には中学受験で必死になるような傾向はない。ただそれぞれが生まれ持った能力にしたがって、学力の仕分けがされているだけなのだ。  そのため、ここにいる人間は僕に限らずおよそ努力を知らない人間ばかりだった。校外の者からは努力を積み重ねる人間が入る学校のように見られているが、そうではないことは校内の人間が一番よく分かっている。  中でも僕は、周囲から「天才」と呼ばれていた。僕の才能は、他とは段違いに優れていたからだ。
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