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正直に勉強はしていないと答えても、決して信じられることはなかった。だがそれも当然だろう。僕は今までずっと、賢明な努力家という印象を抱かれ続けてきたのだ。僕が好んでそのように印象づけたわけではないが、そうであった以上今更それを覆すことなどできるはずがない。今の僕が全て才能によって成り立っていることなど、誰にも分かりはしないのだ。
一度だけ、人と一緒に受験勉強をしてみたことがある。
その年の七月、僕は同じクラスの男子生徒に一緒に勉強をしないかと誘われた。その生徒とあまり親しくしていたわけではないが、とにかく僕はその誘いに乗った。いつもは何かと理由をつけて断るのだが、今回は相手が特別だったからだ。彼は僕に次ぐ学力を持っていた。
彼は名前を塚本と言い、学区内では最も難しいと言われる高校を目指していた。僕を誘った理由は間違いなく僕の勉強法を吸収するためだろう。だがその時、僕はそのことに気付かなかった。むしろ他人の勉強法を見たいという興味から承諾したのだ。
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