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塚本の部屋は比較的広い洋風のものだった。隅にベッドが置かれているにもかかわらず、数人で囲める低い机が悠々と置かれている。その他にも引き出しの多い学習机や高い本棚が置いてあった。窓には網戸がはめ込んであり、弱々しい風や蝉の声を部屋の中に届けていた。
僕と塚本は軽く話をしてから、向かい合って勉強を始めた。僕はその日、数冊の教科書と学校で配布された高校受験向きの問題集を持ち込んでいた。最初のうちは無言でそれを解いていたが、やがてそれにも飽きてきた。元々僕はこんなことはほとんどしない。ただ勉強しているというポーズをとるために持ってきたというだけのことだった。
大方の問題が解き終わり一息ついた時、塚本が声をかけてきた。
「まさかとは思うけど」
彼はそこで言葉を区切った。それほど親しくないとは言え、声音が少し堅い。僕は顔を上げた。
「それしか勉強しないつもりかい?」
塚本は怪訝そうな顔をしている。僕は手元のペンを転がした。
「そのつもりだけど」
そう言いながら僕は彼の手元を見た。そこには分厚い参考書と問題集が広がっていた。
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