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剥ぎ取られた衣服をきちんと着て、フラフラしながら帰宅した。
誰も居ない家。
私は風呂場で何度も何度も身体を洗う。
まるで他人事みたいに心の中で泣いてる自分を見付けた。
なら私は…?
涙は流れなかった。
「……汚い」
そう私は汚い。
弱くて汚くて…。
目に入ったのは剃刀。
震えながらそっと手に取った。
「………」
手首にゆっくり当て、深呼吸。
押し付けて引いた剃刀を。
切れた皮膚は熱を持ち、痛かった…。
「…………っ」
声を殺して泣く泣く…。
「汚い…」
そう私は汚い。
ならこんな小さな穢れを気に出来ない程、汚れてやろう…。
傷付いてなんかやらない。
私は…私だけのもの。
だから泣くのは最後。
汚れてあげる。
…誰の為に?
解らない。
ただもう汚れる事しか考えられなかった。
シャワーで泡を流し、風呂から上がって手首を消毒した。
しゅわしゅわと泡が膨らむ。
切った時よりも痛かった。
「……何処が…」
深い溜め息。
「壊れちゃったんだろうね…」
もう私は泣かない。
だってダッチワイフに感情は要らないもの。
「ふふふ…」
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