プロローグ

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―2010年4月聖桜華学園入学式― 「寝坊した!!」 藤代沙夜の朝はこの一言から始まった。 沙夜は慌てて掛け布団を勢いよくはねのけ、ベッドから跳び降りた。まずは、服を着替えて、靴を履……て、それはまだ早いよ!と、とりあえず落ち着こう…!! 「すぅー…はぁー…すぅ……」 沙夜はパニックになっている頭をなんとか落ち着かせ、ぼさぼさになった髪を鏡を見ながら整えた。 「よしっ!」 沙夜は、両手で頬を叩き気合いを入れると、自室の扉を開き一階ヘと降りていった。 「や、やっぱり無理だよねぇ……?」 沙夜はため息を吐き言った。 「うん。入学式開始まで後5分しかないね。ここからどう頑張っても、最低でも20分はかかるから……無理」 ここは、沙夜が入学する事になっている学校に向かう電車内である。そして、沙夜と会話している人物は“宮野雫”といって、沙夜の幼馴染みである。 「だよねぇ…て、そういえばさ雫も寝坊したの?」 「ううん。してないよ」 「……え?て事は、私が駅前に来るのを待っててくれたの?」 「……う、うん」 雫は、少し俯き頬を赤く染め頷いた。 今から約30分程前に、沙夜と雫は駅前で合流して、この電車に乗り込んだのだが、沙夜はてっきり雫も寝坊して偶然、自分と同じ電車に乗るはめになったのだと思っていた。 「約束したから…昨日の夜電話で一緒に行こう、て約束したから」 「……はい?」 沙夜は記憶をフル回転させた……昨日の夜、昨日の夜…………あっ!!
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