夢の終わり

2/4
前へ
/138ページ
次へ
消えてったいった天国…。 『……………ん…ぅ…。』 『竜也ッッ!!』 目が覚めた…。 消えていく世界が連れてきてくれた場所は、俺が一番来たかった場所。 ――…愛しい人の胸の中。 無理矢理、回された腕は、痛いくらい抱きしめてくれた。 『生きてて良かった…』 『まだ死にたくないもん』 寄せられた肩は、震えていた。 《心配しないで》そんな意味を込めて、弱々しい力をふり絞り抱きしめてあげる。 顔を胸に埋めれば、ほら伝わるよ。 気持ちと体温と心音。 『は―い!イチャイチャは此処までにして下さい』 水を差す言葉を放ったのは、窓際で腕組みをしていた赤西。 でも、その顔は穏やかだ。 『え~!まだ、たっちゃんを抱きしめたいっ』 バシッ 『バカ!傷口開いたら、ど―すんだよッ!』 珍しく我が儘を言う雄一に、頭を叩いたのは聖。 『そうだよ、中丸君。 上ポ、痛くない?』 『痛くないから、大丈夫。』 痛みさえ癒やしてくれる笑顔の田口。 あれ…? いないよ…。 いつもの可愛い笑顔のカメがいない。 『ねぇ―…カメは?』 俺の一言で、和やかな雰囲気が曇り始めた。 三人とも、俺の視線を避けるように俯く。 『黙ってないで、教えてよ』 独り言のように、呟かれた俺の言葉。 赤西が、俺の目の前まで歩みよると口唇を噛み締め教えてくれた。 『夢から―… 目覚めずに、眠り続けている』 悲しみの黒に染まった瞳は、不安定な色へと移ろいでいく。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

768人が本棚に入れています
本棚に追加