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消えてったいった天国…。
『……………ん…ぅ…。』
『竜也ッッ!!』
目が覚めた…。
消えていく世界が連れてきてくれた場所は、俺が一番来たかった場所。
――…愛しい人の胸の中。
無理矢理、回された腕は、痛いくらい抱きしめてくれた。
『生きてて良かった…』
『まだ死にたくないもん』
寄せられた肩は、震えていた。
《心配しないで》そんな意味を込めて、弱々しい力をふり絞り抱きしめてあげる。
顔を胸に埋めれば、ほら伝わるよ。
気持ちと体温と心音。
『は―い!イチャイチャは此処までにして下さい』
水を差す言葉を放ったのは、窓際で腕組みをしていた赤西。
でも、その顔は穏やかだ。
『え~!まだ、たっちゃんを抱きしめたいっ』
バシッ
『バカ!傷口開いたら、ど―すんだよッ!』
珍しく我が儘を言う雄一に、頭を叩いたのは聖。
『そうだよ、中丸君。
上ポ、痛くない?』
『痛くないから、大丈夫。』
痛みさえ癒やしてくれる笑顔の田口。
あれ…?
いないよ…。
いつもの可愛い笑顔のカメがいない。
『ねぇ―…カメは?』
俺の一言で、和やかな雰囲気が曇り始めた。
三人とも、俺の視線を避けるように俯く。
『黙ってないで、教えてよ』
独り言のように、呟かれた俺の言葉。
赤西が、俺の目の前まで歩みよると口唇を噛み締め教えてくれた。
『夢から―…
目覚めずに、眠り続けている』
悲しみの黒に染まった瞳は、不安定な色へと移ろいでいく。
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