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時間を忘れて、尽きる事ないお喋り。 ついつい、つまんでしまう食事と美味しいカクテル。 最初に酔いつぶれたのは、聖であった。 『聖、寝ちゃったね』 聖の短い髪を撫でながら田口が呟いた。 『今夜は、お開きにしますか~?』 こういう時に、仕切り上手なのが雄一。 『そうだな~俺、明日の朝速いし。カメ、起こして~』 『え~!仕方がないなぁ』 聖の寝息が聴こえる店内で、各々、雄一の声に従い片付けを始める。 聖を二階のベッドに運び終えた田口が、耳打ち事に話しかけてきた。 『ちょっと…外で話したい事がある』 『え…?良いよ。』 妙に、真剣な表情をしている田口に戸惑いを感じつつも言われた通り外に出た。 辺りは、闇に包まれてホタルの光のようにこの店の光が輝いている。 そんな淡い光の下では、紅い薔薇が咲き乱れては、俺を見守っているようだ。 『………話って?』 田口は、言葉よりも先に一つの白い封筒を差し出した。 青白い夜空の下、淡い藍色に染まってしまった封筒の宛名は――…     《竜也へ》 『君のお母さんからだよ』 ちょっと切ない声で田口は言う。 『そう……。』 少し震えた指先で、封筒を受け取った。 遺書って…所か。 『じゃぁ、俺も片付けしてくるね』 そそくさと逃げるように、田口は立ち去ろうとした時 『待って!!』 思わず、呼び止めてしまった。 振り向いた田口に、俺は微笑みながら告げた言葉。 『ねぇ―…紅い薔薇、貰っても良いかな?』 【天使に捧げる華】を…。 田口は、目を細め笑う。 『お好きにどうぞ…。』 そう答えると、店内へと入っていった。 一輪だけ紅い薔薇を摘み、受け取った封筒を抱きしめる。 まだ――…読まないよ。 此処で開くものじゃないから。 読むべき場所は―… 終わりを告げる場所で…。
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