世界の始まり

6/8
前へ
/138ページ
次へ
『……天使は、俺のモノ』 それは、低くて小さな声であった。 中丸は、俺を自分の方に引き寄せて、そいつを警戒している。 そいつは、相変わらず冷たい瞳を俺だけに向けている。 隣にいる中丸なんて眼中にないようだ。 中丸が、俺の耳元で話してきた。 『……誰なの?』 『知らない。 なんか…俺の事を[天使]と間違えてる』 中丸は、[天使]と言う言葉に反応したらしく俺の顔を覗きこみ、満足そうに笑っいやがった。 しかも、大きく頷いている。 なんか…照れるし。 『なに、頷いているんだよ』 照れを隠す為に、俺は中丸の腹を殴ってやった。 『痛っ! たっちゃん、天使は殴らないよ~』 中丸は、殴られた腹をさすりながら呟いた。 『うっ、うるさいっ』 あぁ~! さっきまでの重たい雰囲気がなくなったよ。 でも、そいつは、まだ俺を見ている。 何て、言ってこの場を逃げようかな。 此処は精神病院だから、こいつ…精神障害者かな。 俺の事を[天使]って言うのは、妄想からだろう。 そう考えると、さっきまで深く考えていた事がバカバカしい
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

768人が本棚に入れています
本棚に追加