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ひんやりと汗が、額を流れる。
身体の中に核があるとしたら、それが、冷えていくような気がする。
だけど、鼓動はどんどん速くなっていき、呼吸器官にも影響を与えていく。
急に、カメの身体、全体重が俺にのしかかってきた。
ガクンッとカメの身体が俺に委ねられてくる。
思わず、顔を覗き込むと……えっ?目をつぶっている。
意識ないの…?
『カメッ!』
さっきまで動けなかった赤西が、カメの身体を受け止めてくれた。
俺は、カメから開放され安堵感のあまりに力無くその場に座り込んでしまった。
でも、いまだにカメの言葉…声…感触…重さ…が俺から離れず、纏わり付いている。
相変わらず鼓動も速いまま。
すぐ近くで、赤西がカメに向かって話し掛けているが、何だか、遠くでしているような錯覚がする。
俺は、ここいるのに、ここにいないような…よく分からない奇妙な感覚。
『……う…ぇだ?』
懐かしい声がする。
違う。
毎日聞いている声。
中丸の声だ。
『……中丸』
中丸の心配そうな顔が、覗き込んでいる。
ねぇ…そんな心配そうな顔しないで。
俺は、貴方から離れないから。
俺は、中丸の不安を打ち消すために笑ってみた。
上手く笑えたかな?
眩しい光の中、愛しい貴方が微笑み返してくれた。
その瞬間━━━━━
俺の世界は
真っ黒くなってしまった。
それが
この世界の始まりだったんだ。
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