チョコレートは嫌いです。

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「奇希(きき)君、受け取って下さい!」 「ごめん。無理」 瞬殺とは、まさにこの時のためにあると思う。 「奇希ー。お前『また』かぁ?」 「一体、今日で何人にチョコレート渡された?」 同時に、冷やかしという言葉もこの時のためにあると思う。 「うっせーなぁ。それに、この際だから言うけど、俺の名前は希奇!!奇希じゃねぇ!」 「どっちも一緒だろ」 「イントネーションが違ーう!」 バレンタイン。 この行事は一年の中で、一番の天敵といえよう。 「……最悪だ」 チョコレート。 それが原因だった。 甘いものが大っ嫌いな俺は、毎年の事ながらバレンタインは保健室にて休む。 今年もそうなるんだろうなぁ。と思いながら、俺は歩を進め、ぶつくさと文句を言った。 「大体、バレンタインと言うのはだな」 「まーた希奇の説明が始まったよ」 「なげぇぞ、コレ」 それだけ言うと、俺の友達(と言っても最近、本当に友達なのか悩みはじめたが)は早々と俺の側から離れた。 「お、お前等なんなんだよぉ!」 「チョコと女子が大好きな俺達にしてみれば、お前は天敵だ」 「あれだな。モテる男は辛いねぇ」 「っ――――こんの薄情者ー!」 俺の叫びも虚しく、二人はスタスタと俺の側の離れていく。 何故だか無償に腹がたった俺は二人に仕返をすべく、クラウチングスタートの形をとった。 俺渾身のタックル。 「ふん!お前等なんか友達じゃねぇ!眼鏡やろぉ!この……この……完璧やろぉ!!」 最後に捨て台詞を言ってから、玄関に向かって爆走した。
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