5人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「奇希(きき)君、受け取って下さい!」
「ごめん。無理」
瞬殺とは、まさにこの時のためにあると思う。
「奇希ー。お前『また』かぁ?」
「一体、今日で何人にチョコレート渡された?」
同時に、冷やかしという言葉もこの時のためにあると思う。
「うっせーなぁ。それに、この際だから言うけど、俺の名前は希奇!!奇希じゃねぇ!」
「どっちも一緒だろ」
「イントネーションが違ーう!」
バレンタイン。
この行事は一年の中で、一番の天敵といえよう。
「……最悪だ」
チョコレート。
それが原因だった。
甘いものが大っ嫌いな俺は、毎年の事ながらバレンタインは保健室にて休む。
今年もそうなるんだろうなぁ。と思いながら、俺は歩を進め、ぶつくさと文句を言った。
「大体、バレンタインと言うのはだな」
「まーた希奇の説明が始まったよ」
「なげぇぞ、コレ」
それだけ言うと、俺の友達(と言っても最近、本当に友達なのか悩みはじめたが)は早々と俺の側から離れた。
「お、お前等なんなんだよぉ!」
「チョコと女子が大好きな俺達にしてみれば、お前は天敵だ」
「あれだな。モテる男は辛いねぇ」
「っ――――こんの薄情者ー!」
俺の叫びも虚しく、二人はスタスタと俺の側の離れていく。
何故だか無償に腹がたった俺は二人に仕返をすべく、クラウチングスタートの形をとった。
俺渾身のタックル。
「ふん!お前等なんか友達じゃねぇ!眼鏡やろぉ!この……この……完璧やろぉ!!」
最後に捨て台詞を言ってから、玄関に向かって爆走した。
最初のコメントを投稿しよう!