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「希奇ー!おっはよー」
「おぃーっす」
こいつは……花北……花北……なんだっけか。
「あ、希奇!今週のジャ○プすっげのな!」
「おっ。リ○ーンどうなったぁ?」
んーっと、んーっと……轟(とどろき)……穏(やす)?
はぁ。全く。
人気者は――――
「人気者は辛いぜ」
「!?」
心で考えていた事を意気なり口に出され、つい飛び上がってしまう。
振り向けば案の定、幼馴染みの遊佐恵(ゆさけい)が立っていた。
黒いロングヘアを風になびかせながら、恵は口の端を上げて俺を見下ろしてきた。
170もある巨女に、162しかない俺は敵わない。
「希奇、今そんな事考えていたでしょ」
「んなわけねーだろっ」
「やーい!希奇の自惚れやー!」
「っ!マジ死ね!!」
怒りにまかせ蹴りを食らわそうとするが、ヒラリと簡単にかわされてしまう。
まぁ、空手部主将、全国大会1位の女に勝とうってのが馬鹿なんだけどね。
だが、この時は全てのタイミングが悪かった。
かわされた俺の蹴りは窓ガラスに当たり、盛大な音をたてた。
「……」
最早、言葉がなんにも出てこない。
荒々しい足音をたてて先生が近付いてくる。
あぁ。確かあの先生は鬼之塚って名前だったっけか。生活指導部の先生だっけ?
手に持ってるの、竹刀じゃないか。危ないなぁ。
次の瞬間、おでこ当たりを猛烈な痛みが襲った。
それこそ、死ぬかと思うくらいに。
「なに窓ガラス割ってんだこのバカタレがー!」
そこで初めて俺は、自分が窓ガラスを割った事を自覚した。
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