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人がまばらになった廊下を歩く。そのまま帰る算段で鞄も持つ。
築8年という真新しい廊下は学校指定の靴で歩くとキュッと高い音がなるはずだが、不思議と明奈の足音はならない。
教務室前にいた教師が静かに歩く明奈に手を振った。
「悪いね、煩わせちゃって」
「すぐ終わりましたから、気にしないでください」
アンケート用紙と集計した紙を受け取った教師は満足げに数回頷いた。どうやら予想通りの結果だったらしい。
「助かったよ華宮くん」
「いえ。これから下校するので失礼します」
頭を軽く下げて下駄箱に向かう後ろ姿を夕日が照らす。黒髪に反射した光が眩しく、教師は目を細めながら見送った。
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