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男はニコニコと寝ころびながら明菜を見上げていた。
見たところ年は二十歳に手が届いたかといったところで、少し長い黒髪の前髪の下、アーモンド型につり上がった瞳は灰色だった。肌は白いが黄色人に間違いはなさそうだ。
「(……綺麗な顔)」
明奈は思わず男の顔をまじまじと見つめてから、ことの重大さに気付いて眉を吊り上げた。
男は笑ったまま手を軽く振った。
「やぁ、凄いです。腹黒い…じゃないか。凄い猫かぶりですね」
イヤミのこもらない声だったが、明奈は男を睨み付けてから、フッと体の力を抜いてお得意の微笑みを向けてしゃがむ。男との目線が近くなり、男の笑顔は少し落ち着いた。
「猫なんて被ってませんよ。きっとお兄さんの聞き違いです」
「うわぁ、やっぱり凄い。あんなに叫んでたのに聞き違いにしちゃうんですね」
男も明奈に負けない微笑みを称えて言うと、しばらく静けさが当たりを包む。カラスすら鳴かない。
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