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微笑みながらも明奈は内心焦っていた。
バレた。バレたのだ。この16年間誰にもバレてこなかった自分の本性がバレてしまったのだ。
「…………あ」
「?」
バレてしまった、赤の他人に。
名前も知らない赤の他人にバレた所で困ることはない。
その思考で明奈は微笑むのをやめて立ち上がり、下げずむような目で男を指差した。
「どうかしましたか?」
「誤魔化さなくたって構わないじゃない」
こうも態度をころころと変える明奈に、男は感嘆の息を吐いた。これもイヤミではない。純粋な感心だ。
「いいことお兄さん。さっき聞いたことは忘れなさい」
「はぁ…」
「よろしく」
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