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長い髪を靡かせて粗大ゴミの山を背にした明奈は溜め息を吐いた。唯一の憩いの場で、赤の他人とはいえ本性がバレる日が来るとは思わなかった。
次からは周りを確かめてからにしようと空き地から出ようとしたが、男が明奈を呼び止めた。
「明奈さーん」
「!?」
「猫かぶりの明奈さーん?」
名指しで呼び止められ、明奈はクルリと方向転換すると赤い犬小屋に入る男の目の前に急いで戻る。
髪型が乱れたが気にしない。
「名前?!」
「あはは、頭のいい明奈さんは主語述語を使って下さい」
「何で、名前、知ってるのよ!」
急ぎすぎて息を切らす明奈に男は相変わらずニコニコと笑う。綺麗な顔だがだんだんそれにもイライラしてきて頭を踏みつけたくなってきた。
そんな衝動を抑え、男の答えを息を整えながら待つ。
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