8人が本棚に入れています
本棚に追加
男は少し腰をおって明奈と目線をあわせると、男と思えない細い指で顎を持った。息がかかりそうなほど顔が近い。
一歩下がろうとすると、がっちり腰をホールドされる。そうなれば明奈に逃げるすべはない。
「ちょっと…」
「あなたの本性、他の人にバレたらどの位困りますか?」
「!?」
どの位困るか。そんなの人生の終わり位に困る。
が、明奈は目を細めて出来るだけ動揺を表さないようにして口元を上げた。男の顔は見ないよう、白いワイシャツと黒いジーンズの服装を見るようにして動揺を紛らわす。
「困らない。小指の甘皮ほどにも困らないわ」
「そうですか、困らないんですか」
男は綺麗な顔を少し明奈に寄った。灰色の瞳が、嘘を許さないとばかりに明奈を見る。
「困らないんですか?」
いやに威圧感を出す声に明奈は体を固めて素直に頷く。
「ちょ…ちょっとだけ…困る」
最初のコメントを投稿しよう!