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教師に渡されたアンケートを両手で抱え込み、嘆く声や嬉しそうな声であふれるそこに歩みを速める。
何人かの生徒が明奈に気付いて手を振った。親友ということはないが、話さない仲でもない。
明奈もニッコリと手を振り返す。
「華宮さん、華宮さん。凄いよ、今回も華宮さんが1位!」
「本当に凄い、入学してからずっと1位だよね」
クラスメートの甲高い賞賛により、明奈に集まる視線はより多くなる。まるでパンダだ。
パンダになった明奈は周りから尊敬の眼差しや賞賛が恥ずかしいとばかりに頬を染めて首を振る。
「やだ、私なんて全然…」
「そんな謙遜しなくたって」
「本当にだよ。2位の釜嶋くん野球部でしょ?部活と勉強両立できる人の方が凄いよ、私帰宅部だし」
近くに居た2位の欄に名前の書かれた釜嶋に、明奈は視線を向ける。釜嶋は顔を赤くして黒いフレームの眼鏡を上げた。ビン底レンズの釜嶋はそのまま長く黒い前髪をはらって目を隠す。
整った顔立ちの彼女に誉められれば誰でもこうなる。
トドメとばかりに明奈は裸眼でも、眼鏡越しでも眩しい微笑みで釜嶋に声をかける。
「釜嶋くん、次も頑張ってね」
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