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誰かが釜嶋に向けた微笑みにもかかわらず、ほぅっ。と熱のこもった息を吐いた。天使を思わせるその微笑みは人を魅了して止まない。
明奈はそれに知らぬフリをして一番上に書かれた自分の名前と、総合点を横目で確認する。
1位 華宮明奈 675点
2位 釜嶋拓真 662点
その点差13点。
それを確認すると、明奈は教室に入る。成績表を見に行っているせいか、教室には人がまばらにしかいなかった。
廊下のざわめきのせいか空気は軽く、アンケート用紙をめくる手は軽い。
「華宮さん」
アンケート用紙は残り6割。呼ばれた自分の名前と近づいてくる足音に顔をあげる。
明奈はアンケート用紙を離してショートカットの2年生が入ってきたことに気づく。なんどか生徒会の仕事を頼まれた事がある。
その2年生は明奈に近付いて手を顔の前で合わせて声をあげる。
「お願い華宮さん!生徒会の仕事手伝って欲しいの!」
「いいですよ」
数枚の紙を差し出してきた彼女に明奈はそれを迷うことなく受け取る。
「まだ生徒会でもない華宮さんにばかり任せちゃって…」
「いいんです。私こういうのすきですから」
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