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「情けないな、離れるころになってこんな事を言ってさ。
もっと早く言っていれば良かった。
俺は世界一の馬鹿だな」
そう言って紗季の方を向く。
紗季はベンチに体育座りで顔隠し、震えながらうずくまっている。
俺は「紗季……」と言って肩に手を乗せる。
その時だった。
紗季の肩が大きく震えだし、声をあげて笑い出す。
俺は呆気にとられて紗季をただ見つめるだけだった。
しかし、少し立ってもまだ笑っているのでちょっと怒ってしまった。
「何がおかしいんだよ!」
「ごめんごめん、笑って悪かったわよ。でも、大地があまりにも勘違いしてるから」
俺はその言葉の意味が理解出来なかった。
「誤解?」
「うん。
だって引っ越すって言っても学校は変わらないし、ちょっと離れた所に引っ越すだけなんだよ」
「えっ?」
思考が追い付かない……。
「嘘じゃないよ」
俺は戸惑いながらも「えっでも、紗季のお母さんが、会えなくなるのが辛いからって……」と聞く。
紗季は笑いながら「あれはお母さんがちょっといたずらしたんじゃないの」と答える。
「えっ!」
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