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俺は紗季をみる。
紗季は先生と携帯を交互に見ながら何かを真剣そうに見ている。
少し気になったが、小説のことの方が気になり、またノートとにらめっこをする。
俺は授業の間、ずっとノートとにらめっこをして終わった。
授業が終わると紗季が後ろから話し掛けてきた。
「ねぇ、小説は書けた?」
「そんなに簡単に書けないよ」と俺が答えると、紗季は残念そうに「そうなんだ」と自分の席に戻った。
そして、また携帯を真剣そうに見る。
俺は気になったので、紗季の後ろからこっそり覗いて見る。
紗季が真剣そうに見ていたのは、俺の小説だった。
それに気づくと「なかなか良いでしょ」と小声で紗季に言う。
紗季はちょっと驚いた様子で「ちょっと勝手に人の携帯を見ないでよね」と、慌てて携帯を隠したが、照れた顔で「良い小説かもね」と言う。
俺は意外な言葉に面白いことも浮かばず、真面目に「ありがとう」と答えてしまう。
紗季に誉められるなんて珍しいので、とてもその言葉が嬉しかった。
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