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“よし!食い付きましたよ!”
「中身ですか?これですけど…」
ガサガサと袋から中身を取り出す御手洗。それを見た鬼頭は、
「そっ、その包み紙は!!創業85年の老舗!代を重ねるごとに深みが増し、その味は日本に並ぶもの無しとまで言われておる!沢山の有名デパートがデパ地下に出店依頼をするものの、“うちの味を無駄に広める気は無い”と、粋な台詞の一点張りで全て拒否!今や伝説の和菓子店“和菓子 越後屋”の包み紙ではないか!」
目を爛々と輝かせ、一気にまくし立てる鬼頭。
「よ、良くご存じで…」
「ど、どうしてそれを…」
「あぁ、麓の村の人に聞きました。月に一~二度、多い時には三度、山を降りて来て街まで行き、これを買って帰って来てると。その時の貴方の顔は、これ以上無い満面の笑みだったと、村のお婆さんが言ってましたので。」
「おぉ…おぉ…」
既に話は上の空。鬼頭の視線は、御手洗の持つ包み紙を一点に見つめている。
“まさか、これ程とは…少し意地悪しますか。”
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