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「突然の訪問ですし、貴重なお話を聞きに来た訳ですから、これ位の手土産はと思ったのですが…帰れと言われました。ですので、これは持って帰って私が一人で食べる事にします。」
そう言って、帰る振りをする御手洗。その台詞を聞いた鬼頭は、ふっと我に返る。そして、少し…いや、かなり慌てて
「ま、待て!早まるな!因みに…」
「何ですか?」
「中身は…なんじゃ?」
「あの店で一番の人気商品!かなり入手困難な、越後屋の看板メニュー!おはぎですが…何か?」
「おはぎー!」
鬼頭は思わず歓喜の雄叫びを上げる。山の麓まで聞える程に。が、すぐに冷静さを取り戻し、
「…ふむ。まぁ…立ち話もなんじゃし、ワシの小屋でお茶でも飲まんか?ワシも最近はあまり人と話しておらんし、少し位なら話してやってもよいぞ。」
御手洗は少し呆れたが、見事に鬼頭の心を鷲掴みにした。
“これで話が聞ける!上手く行けば、鬼の能力も見せて貰えるかもしれませんね!朝早くから、店に並んだ甲斐がありました!”
「はい!ありがとう御座います!」
「そうと決まれば、ほれ!早く帰るぞ!」
これが、全ての始まりである。
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