始まりの二人

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一人の男が山中をひたすらに歩いていた。 「しくじりましたね。もう少し山登りに適した服と靴にしてくれば良かったですね。」 溜め息まじりに山道を行く男。名を御手洗(みたらい)シュウヘイと言う。職業は考古学者である。 この男、大学の講師をしたり、本も出したりしているが、学会では突拍子も無い仮説を発表したり、訳の分らない論文を書いたりしていた為、考古学界では異端児扱いされている。所謂“厄介者”だった。 「ハァ…本当に…ハァ…こんな所に住んでるんですかねぇ。」 汗でずれた眼鏡を直しながら、人気の無い山道を進む御手洗。 御手洗は人を探していた。こんな山の中で人探し。尋常では無い。だが、御手洗はどうしてもその人物に会いたかった。自分の論文を実証する為に。 「あ!あれは!?」 御手洗の目の先に、煙が上がるのを発見する。山火事でなければ、あそこに人が居る筈だ。そう確信した御手洗は、最後の力を振り絞り走り出す。
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