独り

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「昨日の……見た?」 「うん。凄い感動したよね!」 教室でいつものような雑談が始まった。机に突っ伏していると、視覚を使ってない分、聞くことに集中できる。元々地獄耳だから、小さい声でも拾い上げる。 休み時間、クラスメイトの雑談を聞くのが、僕の趣味だ。 ……そこ、暗いとか言わない! 確かに、目の前はいつも真っ暗だけど。 これが結構楽しいもんで、いろんな人の話を聞いているとさまざまなことが分かる。 イジメっ子の三流の声明の話も、このクラスでの雑談から得た情報だ。 この一ヶ月で、かなりの情報を手に入れた。テストの点数、新カップル、話題の芸能人……etc. さらに最近は個人の好みも分かるようになってきた。僕の生活には役に立たないけど。 「なお君、理科のプリント見せてー!」 「いいよ」 「ありがとっ!やっぱりなお君は頼りになるよ」 うちのクラス名物のバカップルは今日も仲がいいみたいだ。余計な会話をしなきゃいいけど。 「いつもごめんね~」 「気にしなくていいよ。百合佳が笑ってくれるならどんなことも苦に思わない」 「ありがとっ!なお君大好きっ!」 「俺もだ、百合佳」 あ~、コントは家でやってほしいな。周りの人達が呆れているのが見なくてもわかる。 その後、チャイムが鳴るまでコントは続いた。
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