独り

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給食中の雑談もなかなか面白い。 僕は黙々と食事をしながら、周りの会話に聴覚を集中させる。食事はほぼ無意識に取っていると言ってもいい。 たまに、嫌いな食べ物も無意識に食べている時もある。なんというか……まあ、悪いことじゃない。 「ぁあー!」 「うおっ!」 「わあぁー!鞄!鞄どかして!」 教室に響く悲鳴。誰かが牛乳ビンを落としたらしい。音を聞いた感じビンは割れてないみたいだ。 「はい、雑巾」 「いや、まずはティッシュだろ」 「誰かティッシュ持ってない?」 教室の扉が動く音がした。トイレットペーパーを取りに行ったのかな?賢明な判断だと僕は思うよ。 ふと、鳥のさえずりが僕の耳に届いた。ムクドリ、かな?教室の中はまだざわざわしていたけど、そのさえずりはやけにハッキリ聞くことが出来る。毎日いろんな音を聞くけど、これほど心地の良いのはそうは無いな。 目をつぶって鳥のさえずりを堪能していると、ドタドタと足音が聞こえきた。 薄く目蓋を持ち上げた僕の瞳に映ったのは、わしゃわしゃした紙の塊を抱えた生徒。それがトイレットペーパーだと気付くのに、数秒かかった。 ……普通に持ってこいよ。 僕と同じことを考えたのか、教室は一瞬で静かになった。
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