気持ち

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「はあ……」    家に帰り、編山智羽はベッドに埋もれてからこれで二十三回目の溜め息をついた。    編山の部屋は女の子の部屋にしてはさっぱりしていて、可愛らしげのあるものは桃色のベッドや棚に並んだいくつかのぬいぐるみぐらいしかなかった。    元々は四つ年上である兄が使っていた部屋で、兄が県外の大学に行く際に編山に渡してくれたのだ。  部屋の模様替えは好きにしてもいい、と言われていたけど、編山は未だにそれをしていない。  大好きだった兄がいたという事が無くなるのが嫌だったからである。      そう。大好きだった。     「……はあ」    これで二十四回目。    数までちゃんと数えているのだから、編山は余計に気を重くしてしまう。   「何やってるの?私……」    呟き、布団の端をぎゅっと掴む。    あの時、アキトが沫に抱き付いていた姿を見て、編山は胸の奥で暗い何かが這い回った、そんな感覚がした。    彼が沫にいつもべったりなのは知っていたし、何度かその場面を目撃もしている。    だけど、その二人の姿を何度も見て来たというのに、今日はいつもと違っていた。      沫にべったりしているアキトを見て、どうしようも無くイライラしてしまったのだ。     「もしかして私……、嫉妬してるの?」    気持ちを言葉に変えて、編山は自分で否定した。   「(何を言ってるの?アキト君は男の子なんだよ?)」    馬鹿馬鹿しい事だけど、笑えなかった。あの二人が一緒にいる姿を思い浮かべるだけで、胸が絞められるように、きりりと痛む。   「神紀君……、私……」    掴んでいた布団を更に強く握り締めてから、編山はもう一度、小さく溜め息を付いた。
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