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夏も過ぎて、まだ余韻を残しつつも涼しくなり始めている秋の季節。
九月二日
妙に微妙な日付である今日が、二学期の始業式がある日だった。
「ん……」
もぞりとベッドの中から手を伸ばし、沫は目覚まし時計を掴んだ。
昨日は律義にやや早めに寝たからか、時計を見ればまだ六時を切っていない。
しかし、眠気が浅いため二度寝はせず、ベッドの中で軽く伸びをしてからゆっくりと降りた。
が、やけに背中が重い。
「…………おい」
くるりと背後を見る。
そこには、沫の背中に抱き付きながらも寝ている少年、アキトがいた。
くすんだ銀の短い髪に、普通の中学生よりも小さな身体は一糸も纏っていない全裸。
愛くるしい眠りの表情は普通ならば頬が緩むのだろうが、低血圧である今の沫には一切通用しない。
「とっとと離れろ」
「もぎゅん!」
支えであった両手を解くと、アキトはベッドに背中から落ちて奇妙な声を出した。
なんだよ、もぎゅんって。
「んぁ?んぅ?」
ひっくり返った状態で寝ぼけ眼をきょろきょろとさせ、沫と目が合うとぱぁっと顔を明るくさせた。
「おはよっ! 沫!」
言うが早いか、ばねのように跳ねて起き上がり、すぐに飛び付いて来る。
「ああ、おはよう」
挨拶を返し、飛び付いて来たアキトを沫は軽く避けた。
頭から飛び付いて来るものを受け止めようなんて危なっかしい考えは無い。
「はぎゅ!?」
またもや奇声をあげて、振り返って見ると今度はソファーでひっくり返っていた。
何度も繰り返している、いつもの朝だった。
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