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「あ、そ~だ。もうすぐ学園祭だよね」
久し振りに制服を着ての登校に少し感慨に耽っていると、アキトがそんな事を言った。
「あーそっか、そんなのあったなー」
真治は今思い出したのか、ぽんと手を叩く。
俺達の学校では、九月の末である九月三十日に兄弟校の州ノ浜(スノハマ)高等学校と、合同の学校祭が行われる。
合同だからその学校祭はとにかく人数が多く、またそれを見に来る者も多数いるというとても賑やかな一大行事だ。
両校の生徒達の交流が主な目的で、友達作りや学園祭を機に恋人を作る事を目的としている奴等も少なくはない。
そして、この学校祭最大の見せ場であるイベントは……。
「今年は俺達、なんの出し物をするんだろうね~」
「え? 沫達、去年も何かやってたの?」
「やってた、というかやらされてたって言った方が正しいな」
これがまた厄介なのだが、両校の交流の為に、両校のクラスがペアとなって、模擬店を開く事になっているのだ。
組分けは両校長がランダムで決め、互いの相性が合う合わないに関わらず、そのペアでやらなければならないのだ。
これをやるのは三日ある学校祭の最後である三日目で、ようはこの活動によって個人の学校祭の総合的な評価が大きく決まってくるという訳だ。
ちなみに去年、俺達は喫茶店をしていたのだが当たったクラスの奴等の素行が悪く、向こうの学校の奴等がセクハラ行為をしたり客と乱闘騒ぎをしたりして、強制停止を余儀なくされた。
沫はほとんど干渉してはいなかったからショックはさほど無かったものの、真治や水鳥はひどく落胆していた事を覚えている。
「まあ、そんなに期待しない方がいいだろうな」
その言葉は真実だが、今年は去年のようにはなって欲しくは無いと、沫は心中で思ってはいた。
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