二学期

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 かかかっ、と黒板にチョークで素早く書き込み、くるりと学級委員である名宮水鳥が振り返る。   「去年の喫茶は中断とはいえ売れ行きは上々だったからね。今回はそれに何かをプラスしてやっちゃおう! という訳でっ、この中から何か選んでね?」    早口でそう言って黒板をこんこん叩く水鳥の後ろには、あらかじめ考えてきましたと言わんばかりに隅から隅まで文字で埋まっていた。    漫画喫茶やメイド喫茶からお化け屋敷、ファンタジーなんて意味の分からないものまである。    そして、この中から選べという事は、普通の喫茶という選択肢はすでにないものとされているという訳だ。   「おい、名宮」 「なんだい沫君?」 「普通の喫茶でもいいんじゃねえのか?」    俺の問いに、名宮は肩をすくめて、ちちち、と指を左右に振る。    そのリアクションはなんなんだ。   「甘い甘いよ沫君! 大衆がそんな普通のを求めている訳が無い! まず私が求めて無い!!」 「それはお前だけだ」 「だからこそ私はどかんと一発、奇妙奇天烈な花火を打ち上げたいのさ!」    そうか、こっちの意見は徹底的に無視する方針か。
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