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そして六日後の部室。
「さてと、それぞれネタ煮つめてきたか?」
部長(宏である)が部員全員(たったの三人)の顔を見回す。
「んじゃ見せて」
宏がそれぞれからノートを集める。
文芸部ではネタを練る際にはこのノートを使うことにしている。
特に理由は無いそうなのだが。
「祐のは、病弱少年とわんぱく少女。悪くはないかな。葵のは、ん?」
「ゴメン!全然思い付かなくて」
顔の目の前で両手を合わせて謝る葵。
「ったく。竜、お?結構書いてあるな、なになに、自殺をとめた男とその女のラブ?なんじゃこりゃ。次は、優等生と劣等生、お前が後か?」
「うっせえな!前だよ!文句あるか?」
立ち上がって人指し指を宏に向け、つばを飛ばす。
「ていうか、自分モデルにしたの?」
若干引き気味の葵。
祐に至っては既に部屋の隅に避難している始末。
「まあ、追試マニアをモデルにして優等生はねえよな」
「こぉの、ガリベンメガネがぁ!」
「おっと、待て」
宏は自分に向かってくる竜の前に掌を向け制止した。
「半田に会わせてやる」
しばし、室内に沈黙が横たわる。
最初に沈黙を断ち切ったのは葵だった。
「宏まで馬鹿になったの?同じ学校で、クラスまでわかってるんだよ?なんでわざわざ会わせてもらうわけ?」
「そりゃあ、決まってるだろ?」
軽く咳払いをして、少し間を置く。
「このままじゃ、いつ会えるかも分からないからだ。学校にいても半田に会える確証は無い」
「宏の脳味噌が竜と同レベルまで落ちちゃいましたか」
ぼそりと呟く祐。
「祐ちゃん……俺いるんだけど」
「空耳ですよ。きっと」
「祐ちゃんも俺のこと馬鹿だと思うようになっちゃったのかぁ!」
「そんなことはないですよ」
わめく竜の頭を母親のように撫でながら慰める。
「ずーっと前からそう思ってましたから安心して下さい」
持ち上げて落とす。
天使の笑顔で悪魔の所業を行うと言うのが最適だろう。
「じゃあ次の土曜に駅前集合な」
「土曜はちょっと無理かも」
にが虫を噛み潰したような顔で、思案する葵。
「竜さえ来れればいいさ、結果は教えてやるから」
「あ、そう?」
「宏、何時ですか?」
「六時だ。午後のな」
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