会うは好きの初めなり

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 「あ、宏。遅いですよ?」  「悪いな。ところで今の人誰だ?」  祐の石化の呪文の効果が切れ、動き出した警官を見て宏が尋ねる。  「うーん、おまわりさんです」  「はあ?なんかしたのか?」  疑るような口調で尋ねるが、特に意味を持ってはいないようだ。  「そ、そんなわけ無いですよ!」  「だよな。竜はまだか?」  遠くの方に竜がいないか見回す二人。  「あ、来ました……ね?」  祐の語尾はおかしく上がり、疑問の形になってしまった。  それというのも、竜が向こうでおかしな動きをしていたからだ。  「あれは、悩んでるのか?」  あっちへうろうろ、こっちへふらふら。  待ち合わせ場所寸前で、不安になったのだろうか。  しかし、その場所は完全に丸見えである。  「アホだな」  そう呟くと、駅に向かって歩き出す宏。  「え?待たないんですか?」  「どうせ俺らがいなくなったのに気付けば慌てて走ってくるぜ?『悪い!寝坊した!』とか言って」  「そうですかぁ?」  祐はそう言いながらもトコトコと宏の後ろについて行った。  宏は駅の改札を通らず、脇で止まった。  「おーい!」  祐が宏に合わせて立ち止まると、改札を出たばかりの見慣れた人物に出会う。  「やあ、二人とも奇遇だね」  「ああ、アオですか。どこに何しに行ったんですか?」  葵は少しの間首を傾げ、その結果を祐に教えた。  「んー、だから『用事』だよ」  「用事ってなんですか?」  「あ、それは秘密」  と、乙女らしく振る舞う葵を見た宏は明らかに不満そうな顔をしている。  当然、葵もそれに気付いた様子で。  「何よ、文句ある?」  「いや、でもそれはもう見たくないな。吐気がする」  このまま放って置いたら喧嘩が始まっただろうが、それは竜の登場によって免れた。  「うはー!ごめん!寝坊した!」  一瞬の沈黙の後に宏と祐は小さく笑い出した。  「え?何?アオ、これどうなってんの?」  「さあ?」  状況の掴めない二人を放置したままではいけないと思ったのか、祐は必死に笑いを堪えて言った。  「いえ、竜の言い訳があまりにも予想通りだったんですよ」  笑いを堪えながら喋ったために、合間にフフッとかククッなどが混じっている。  「よく分からないけど。あれ?そういえばなんでアオがいるの?」
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