会うは好きの初めなり

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 少しばかり時間を巻き戻す。  こちらは例のトリオ。  「じゃあ、よろしく頼む」  宏はかかってきた電話にそう応えていた。  「わるいな、待たせた」  二人の方を見て軽い態度で謝る。  「それはそうと、なんで僕たちはレストランの前にいるんですか?」  「今日の目的は半田に会うことだろ?」  「半田さんここにいんの!?」  「おまえはうるさい。ともかく覗けよ、ホールらしいから」  竜は植え込みの側の窓から中の様子を覗くが、目当ての彼女は見付からないらしく。  「宏、ホールって何?」  「簡単に言えばウェイトレスだよ」  「ふーん」  と再び眼を皿のようにして中の様子をうかがう。  ―ガランッガランッ!  「なんだ?」  その音に気付いたのは、神経を張り詰めていた竜だった。  「どうした?」  「今なんか音が聞こえなかった?」  首を横に振る宏に対して祐は首を傾げる。  「絶対なんか聞こえたよー」  と、レストランの周りをうろうろとする。  「いた!」  竜が建物の狭間に消えて行くと、二人も弾かれたように走り出した。  「おい!」  二人がそこから路地裏を見ると、一人の女が三人の男に囲まれていた。  その男の内一人は無謀にも二人に突撃した竜だった。  「止めて下さい!」  祐はとにかく止めなければと動き出す。  一方、宏は駆け出そうとした祐の腕をぐいと引き制止する。  「待った!竜に任せようぜ」  「でも!」  「あの女の子が半田。いい格好させてやろうぜ」  祐は何か言いたげに口を動かしたが、もう止めに入ろうとはしなくなった。  「それにしても、竜あんなに強かったですか?」  祐は素朴な疑問を口から洩らした。  「何言ってんの、竜は喧嘩弱いままだよ」  「え?じゃあなんで?」  宏は不気味な笑みを浮かべて眼鏡を上げる。  「あの二人組がサクラだからだよ。俺が知り合いに頼んどいた」  「え!?」  祐はまさかといった表情だった。  「驚いただろう?」  と得意気に自慢する宏をよそに祐の表情は青ざめてゆく。  「宏はあの二人に僕も襲うように頼みましたか?」  「は?なんでそんな……」  「僕はさっきあの二人に絡まれたんですよ!」  「おい、じゃああれは?」  宏が路地裏を見ると振り上げられた男の右手が銀色に光った。  それは紛れもなく……  ―ドスッ
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