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「ええ!?大家さんと喧嘩した?」
「ええ、ちょっとしたことで」
いつもの四人組に新たに一人加わりいつもの五人組となった演劇部兼文芸部の彼らは、いつものように昼食を教室で食べていた。
「で?どうすんだ?」
「家賃の残り分一週間だけは住まわせてくれるそうよ。だから適当に空き家を探すわ」
「大変ですねえ」
葵が眉間に皺を寄せて唸る。
「何か力になれない?」
「大丈夫。それじゃあ、またね」
半田は軽く笑うと自分の弁当包をひっさげて帰っていった。
「お前はいい加減にしやがれ!」
宏は無口な地蔵と化した竜を見るや、即座に頭に一撃を入れた。
「黙ってないで話しゃあいいだろ」
竜は誰にも聞こえない程度にボソボソと呟く。
「あ?」
と、宏が耳を近付ける。
「わっ!!」
タイミングを見計らい、大きな声で怒鳴る。
「このやろー」
「うるさいな!静かにしてよ!」
葵の一喝で二人だけでなく教室全体が静まる。
「あ、ごめん」
その一言で今度はコンポの電源を入れなおしたようにざわめきが戻った。
「葵、さっきから額皺だらけにして何をむーむー唸ってるんだ?」
「む?いや、半田さんの事でうちは大丈夫かな?って思って」
宏と祐は葵の家を想像して言う。
「広さ的には可能だな」
「いいと思いますよ」
一方こういった時に昔馴染みでない竜はいつも残される。
「アオの家ってそんな広いの?」
「普通の家よりは広いと思うけど、そんなに広い?」
回答のはずが、質問になってしまっている。
「かなり広いですよ」
紙パックのジュースにストローを刺しながら祐が答える。
「へーじゃあ俺も遊びに行きたい!」
「駄目」
「えーなんで?」
「駄目ったら駄目」
このままエンドレスに押し問答が続きかねなかったが、宏がそれを止めた。
「うるせえ、特に竜」
読んでいた本にしおりを挟んでから閉じると、体を正面に向けてから言った。
「けど、やめといた方がいいぞ?」
「なんで?」
「なんでもだ」
「理由になってないよ、バカメガネ」
「バカメガネ……」
「もういいよ、じゃあね」
そう言ったかと思うと、立ち上がり教室を出ていった。
「なんでやめた方がいいんですか?」
「ああ、原因がちょっとしたことでってのがマズイんだよ」
祐は理解しかねているようだった。
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