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「はい、質問があります」
祐が手を挙げて質問する。
「なんだ?」
先に返事をしたのは宏だった。
「どうして今日は空気が、なんと言うかギスギスというか、ドロドロというか、とにかく嫌な感じなんでしょうか?」
「それはね、祐。」
葵が割り込み、宏を睨みながら答える。
「このわからずやバカメガネのせいなの」
「なんとでも言え、気にならん」
「それはよかったわね」
この間に、祐は竜の側に避難していた。
「怖いですね」
「うん、恐ろしい」
二人の間には二度と耳にしたくなくなるような罵詈雑言の嵐が行き交っていた。
「祐ちゃん、止めてきてよ」
「嫌ですよ。あの二人の喧嘩は怖すぎです」
「ええ、祐ちゃんでも無理なの?」
「はい、無理です。あ」
祐は二人の喧嘩を見つめている人、というより呆然としている人に目を止めた。
「これは、どうなってるの?」
「半田さん、ちょっとこっちに避難してください」
祐がちょいちょいと手でアピールする。
「いいわよ、もうこいつとのくだらない争いはやめるから」
と、まだ口調が怒り気味の葵。
「ねえ半田さん、アパート見付かりそう?」
「いいえ、でもそれが何か?」
「だったら……」
「そう、私は助かるけど。家の人は困るでしょう?」
「大丈夫!ちゃんと許可もらってるんだから!」
「本当に?じゃあ今日伺っていいかしら?一応ちゃんと挨拶をしておかないと」
「そうね、じゃあ帰りにまた会おう?」
ポカン顔の半田。
それを見た葵は首を傾げる。
「え、駄目?」
「いや、駄目って言うか……」
自分の持っていた弁当包を目の高さまで上げてから、
「お弁当食べてっちゃ駄目かしら?」
「あ、ゴメンね。じゃあ今日はそっちで食べようか」
葵は宏を睨むが、宏は気付いているにも関わらず眉一つ動かさずに弁当をつまんでいた。
二人が教室から出ていったのを見計らってから祐が宏に近付く。
「何したんですか?何したかは知りませんが、早い内に謝った方がいいですよ」
「おれは何もしてねえよ。忠告しただけだ」
「またですか?それで何度アオの機嫌を損ねたかわかってますか?」
「二人ってそんなに仲悪いの?」
置いてけぼりの竜が割り込んで尋ねる。
「いや、まあその……」
二人は黙りこんでしまい、次はなかった。
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