会うは好きの初めなり

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 「いい加減に教えてよ」  「いーやーだー」  言っておくがこれは、駄々をこねる子供とそれに困る母親の図、ではない。  人の色恋沙汰に興味本位で首を突っ込む少女とそれに困惑する少年の図、である。  「何で皆よってたかって!」  彼の言う通りだ。このようなとき、人は必ずと言ってもいいほどに興味を持つ。  「まあ別にお前が言わないならそれはそれでいいさ」  昨日の本の続きを読みながら宏が呟く。  「なんですか?宏が素直な時は大抵何か企んでますよ?」  「ほーへ」  モゴモゴとパンを食べながら祐に同意する葵。  「コラ、訂正しろ」  「宏が素直な時は必ず悪事を企んでますよ。でいいですか?」  「いいわけ無いだろ!むしろグレード上がってんじゃねえか!」  「よかったな、宏」  と竜が宏に親指を立てて笑う。  「テメ……一年五組の半田彩」  後半、声の大きさを下げてボソボソと周りには聞こえない程度で話す。  「ちょっ!おま、え?何で!?」  「やっぱりドンピシャか」  宏はにやりといやらしく笑い、それを見て竜も初めてカマをかけられたことに気付いたらしく、顔は恥ずかしさと怒りで真っ赤になっている。  「何で分かったんですか?」  「ほーほ、はむへ?」  祐と葵が興味津々といった様子で尋ねる。  「葵は口いっぱいのアンパンをなんとかしろ。何、簡単なことだって普段こいつ授業は寝てんのに書道の授業だけ起きてんだよ。書道の担任そういうの甘いのにな。んで書道の授業は五組と合同、書道に出てる五組の女子は半田だけだからな」  「この馬鹿メガネ!何もかもばらすなよ!」  またしても宏と竜の喧嘩が始まった。  他の二人はそんなことは気にもしない様子で半田彩について語りだした。  「半田さんってどんな人なんですか?」  「うーん、おとなしい感じかな。黒いロングヘアーが私としては綺麗でいいな」  「アオは少し栗色ですからね」  「そうね。あっそういえば」  葵は自分の髪に触れると何かを思い出したように言い出した。  「最近半田さん学校来てないんじゃないかな?」  「え、そうなんですか?」  「そうなんだよ!」  急に竜が話に割って入って来た。  竜の背中には足跡が残っているが、それについては誰の仕業か、皆わかっているらしい。
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