9人が本棚に入れています
本棚に追加
/139ページ
「はあ、くだらねぇ。俺、図書室行くわ」
「ん」
誰が返事をしたのかは分からないが、三人は丁度口に何かを含んでいるらしく、宏もそれを見てためいきをつきながら歩いて行った。
「でも、好きなら告白すればいいじゃないですか?」
「ちょっと祐、それは直球すぎるでしょ」
「そっかー直球かぁ」
と、葵の言うことは聞いていなかった様子の竜。
「ちょっと駄目よ、竜。告白は変化球じゃなきゃ」
「変化球?」
「そう、最初は別の話から入ってそれとなく伝えるの」
竜に告白の仕方を説く葵だが、祐も果敢に割り込む。
「いいえ!竜は変化球使える程の技術は持ち合わせてません。直球しかありません」
「馬鹿ねぇ、直球は球威が無きゃ無意味。このへたれにそんな球威は無いわよ。だからこそ変化球でいくのよ」
「中途半端な変化球は遠回しすぎて伝わりませんよ」
「直球は引かれるわよ!」
「大体変化球使えるようなら自分で対策練れます。それができないようなまぬけにできるのは直球です!」
「うじうじ悩むような軟弱の直球じゃだめだってば」
「ちょっと君達……」
はっ、と我に返った二人の横にはこれ以上無いまでに沈む竜がいた。
「どうせ俺には球威も技術も無いですよ。ええ、そうですとも。ええ、へたれです。まぬけです。軟弱ですよ」
「ち、違いますよ。つい本音が出ただけです」
「それフォローになってないんじゃない?」
「あー、いや、普段の竜を見てるからこんなこと言うんです」
喋れば喋るほどに墓穴を掘る祐だった。
「酷いもんだな」
あちこちに染みや破けた跡のある本を手に呟く男子生徒。
その横には宏がいた。
「どうでもいいが、俺に愚痴るな」
「だってこれとか酷いだろ?」
彼が突き出した本はページの中程まで破れたところをセロハンテープで修復されていたのだが、何しろセロハンテープは劣化が激しいため黄ばんでいた。
「それはどうでもいい。訊きたいことがあるんだ」
「何だ?」
手にしていた本を棚に戻すと宏に向き直った。
「五組の半田彩ってどんな奴だ?最近学校来てねえらしいけど」
「半田ぁ!?あいつはマズイって!好きになるのは他の奴にしとけって!」
「そういう意味じゃねえよ。けど、そんなにヤバい奴なのか?名前訊いただけなのに」
それを受け、彼の顔は曇った。
最初のコメントを投稿しよう!