会うは好きの初めなり

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 「いや、実は半田については……」  「知らないのか?図書委員で生徒会兼新聞部のお前が」  「いや、そんなわけないだろ、『丘の上高校の情報屋』って呼ばれてるこの俺が」  「聞いたこと無いな。知ってるなら教えろ」  「けどなぁ」  どうみても答えにくそうである。  「孝太!もったいぶるなよ」  「分かったよ!半田には良い噂が無いんだ」  「どんな噂だ」  彼も宏の目の前に座り話始める。  「風俗でバイトしてるとか、体売ってるとか、刺青入った人と交際してるとか、拳銃持ってるとか、殺人前科があるとか、まあいろいろ」  一女子高生の噂にしてはド派手な噂が多いようだ。  「信憑性薄すぎないか?」  「まあ俺もネタ仕入れた時にはそう思ったさ」  「今は違うのか?」  「ああ、俺があいつをつけた時のことだが、まかれたっていうか見失ったんだけど、いつも裏路地に入って行くんだよ。怪しくないか?」  宏の目は変わらず孝太に向けられているが、軽蔑の目に変わっている。  「ストーカーは犯罪だ」  「ま、それは置いといてくれよ」  孝太は苦笑いで物を脇に置くジェスチャーをした。  「けど、これは本当。半田は今自主休学中だ。知らなかったのか?」  「いや、聞いたことない」  「当たり前といえば当たり前か、俺の情報操作の賜(たまもの)だな」  椅子にふんぞりかえり胸の当たりで腕を組み、優越感に浸っている様子の孝太。  だが、宏が何を思ったか椅子を力強く蹴ると、椅子は見事に傾き、重心はついに限界を超え、倒れた。  「うわぁいだおわぁで!」  「生きてはいるな。その情報しばらくは流すなよ」  「え?なんで?」  と言ってから、頭をさすり、立ち上がる。  「多少ワケアリでな」  「ふーん」  孝太は納得はしていない様子だが、理由は聞くまいといった様子でもあった。  「小林くーん?」  図書室の奥の方から司書の声が聞こえた。  「はーい、今行きますよ。じゃあな」  「頼んだぞ」  最後にそう言い残し、図書室を去る。
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