【出会い】

1/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

【出会い】

「にゃ~あん。」  春の初め…。 冷たい雨がシトシト‥‥‥夜道を子猫が一匹、とぼとぼ…ピチャン。 「何してるの?」 声がした方に振り返ると、小さな犬小屋から門の鉄格子ごしに見ているのは真っ白なマルチーズだった。 「別に何も…。」 「びしょびしょよ。おうちへ帰らないの?」 「家なんて…。」 うつむく子猫に、 「あら? ココへ来る? 私も今日来たばかりよ。」 と、ニッコリ。 きゃん!! きゃん!! 突然、子犬は特有のかん高い鳴き声で騒いだ。 「どうしたの? 急に…。」 「トモちゃんを呼んだの、私の飼い主よ。」 家の電気が付いた途端、男の子の声がした。 『お母さん、ニイニが鳴いてるよ。』 子猫が耳をくるっと回す。 「ニイニ?」 「あ、私の名前。ママから離れて悲しくて泣いてたら…。」 ニイニはクスッと笑った。 「ママか…。」 子猫はうなだれた。  
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!