第一章 曲がり者の集結

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     * 陽の暮れかかった夕方、人気のない校舎の一角にあるカウンセラー室で、二人は親しげに会話をしていた。 「まさか、久しぶりの再会がここでなんて、夢にも思わなかったよ」 苦笑を滲ませながらも、どこか嬉しそうに言うのは、滝沢だ。 「まあ、これも何かの縁だろう。よろしく頼むよ、先生」 一方、原は至極落ち着いた口調で応える。 今はあの無機質な眼はしていなく、どこか懐かしそうに目を細めていた。 滝沢は原との再会が余程嬉しいらしく、人懐こい笑顔でしきりに世間話に花を咲かせる。 その様子を見て、原は安心したように微笑み返した。 「その様子じゃ、随分良くなったんだな。 最近、あの夢はもう見ないかい?」 途端に滝沢から笑みが消えた。 「……ああ。ついこの間までは見なかったんだけど、最近になって……」 「見るのかい?」 「……あいつがあんな事を聞いたりするから……」 ボソボソと言うのも原は聞き逃さず、滝沢の言う"あいつ"の存在を問う。 すると、いくらかばつの悪そうに、しかしそれでも彼は答えた。 「佐野っていう子なんだけど、赴任初日にある質問をしてきたんだ。 "滝沢先生のご両親は今何処にいるんですか?"ってさ」 「それはなんというか…随分的を射ているね。 彼女がまさかタクの過去を知っているはずがないんだろう?」 「まあ、それは間違いなく知らないと思う。 でも、それからというもの、話す機会があればいちいち探るような事を言ってくるんだ」 「探るような事?」 「そう、はたから聞いていれば何ともないん事だけど、俺にとっては特別な意味合いを持つ事を、さ」 「それは例えばあの質問のような?」 「……どうしてだろう? いちいち触れられたくない領域にいつの間にか入ってくるんだ。 知られるなんて、そんな事あるはずないのに」 「それでも、彼女は確かに触れてくるんだろう?」 「だから佐野とは、あまり話したくないんだ。 佐野といると、せっかく癒えかけた傷が再び疼きだす」 「……そう。 不眠ではないかい?なんなら、知り合いに睡眠導入剤を処方してもらうけど」 滝沢は力なく首を振った。 そして、疲れたような笑みを浮かべた。 「どうしても眠れないようなら頼むよ。 でも今はいらない。多少のアルコールで事足りてるから」 「深い眠りは怖いかい?」 「…………」  
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