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「アルコールは適量なら良薬になるが、過度な摂取は命取りになるよ。
何でも、溺れてはいけない。覚えておいてくれ」
「……ありがとう。肝に命じておくよ」
そう応えながらも、滝沢はデジャウ゛を感じていた。
こういうやり取りは覚えがある。
彼は今、滝沢にカウンセリングを施したのだ。
以前に彼が滝沢にしたように。
ふと、原は話題の矛先を変えた。
「その子の名前は、佐野なんていうんだい?」
「優だよ。佐野優」
「……そう」
滝沢は見逃してしまった。
その名前を聞いた瞬間、彼がひどく悲し気に目を細めた事を。
滝沢は聞き逃さしてしまった。
彼が小さく小さく、
「……美咲……」
そう呟いた事に。
こうして、曲がり者は集う。
運命の糸に導かれるように。
そうして始まるのだ。
灰色に染まる、暗鬱な夢が。
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